義父が私に遺してくれた宝物

主人からプロポーズされて間も無く、義父に初めて会ったのが20年前。

先に面識のあった義母からの前情報では

「気難しい」とか「手のかかる人」とか「食にうるさい」とか💧、、、、そう脅かされていたけれども😅、私は噂の義父に会える日が楽しみだった。

 

 

私の実家が懐石料理店なので、私の両親と一緒にそこで初めて会うことになった。

先に店に着いて入り口で待っていると、義父と義母がのれんをくぐって入ってきた。

 

義父は私を見るなり満面の笑みを浮かべ、一瞬にして私を娘として迎え入れてくれた。

義父は”息子が結婚する事の喜び”に溢れ、とても上機嫌だった。

20年経った今でも、その時の笑顔はよく覚えている。

私にとっての義父の印象は「お洒落で、豪快で、強引で、憎めない」魅力的な人だった。

その日は楽しく気持ちの良い両家の初顔合わせとなった。

 

 

しばらくすると、義父からゴルフ道具一式が私に送られてきた。

義父曰く「ゴルフは何歳になっても出来るスポーツであり親子でプレーも出来るしイイよ。だからやった方がイイ。」とのこと。

半ば強引だけれども、私はスポーツが好きなので素直にゴルフを始めた。

 

休みの日には主人から特訓を受け、主人のいない日は一人で打ちっ放しへ行き自分のフォームをビデオで確認。自宅では鏡の前でフォームチェックとパター練習。

義父が遊びに来ると打ちっ放しに行き特訓。

義父からアドバイスをもらえば次に会う日までにクリアさせる。

そんな日々を送り、ついに義父、義母、主人と

一緒にコースへ出る日が来た。

 

 

 

コースデビューは爽やかに晴れた日だった。

義父は私が打つ時にはアドバイスをし、バンカーがあると次の組が来るまで練習し、プレーしながらも色々と教えてくれた。

義父は私が良いショットをするととても喜び

失敗すると細かく指導が入った。

その様子を義母と主人が面白がって見ていた。

そうして無事にデビューを終えたのだった。

 

その日の夜は皆で食事をし、今日のプレーを振り返りながらお酒を飲んだ🍶

無事にデビューできた安心感から私はほろ酔い加減で今夜はゆっくり温泉にでも入って早く寝よう、、、と思っていた時だった。

 

義父が「よし!今から打ちっ放しに行くぞ!」と言い出した。

(えーーーーーっっっ💦⁉️)

心の中で叫ぶ私。。。

「お義父さん、私、お酒も入ってるし無理ですよー💦」と言ってみるものの、義父はお構い無し!

「これぐらい大丈夫だ。今やった方が身体が覚えるから」と言って義母も主人も道連れとなり、強引に打ちっ放しに連れて行かれた。

もちろん、特訓を受けるのは私だけ。

義父を止められない事を百も承知な義母と主人は、缶コーヒーを片手にその様子を見て談笑していた。

 

足の位置、構え、振り切り方、、、熱心な特訓は打ちっ放し場が閉店するまで続いた。

家に帰った時には酔いも冷めてグッタリ。

ゴルフ漬けの1日が終わった。

 

 

それから数回、義父とコースに出たけれども2年後、私は長男を授かってから、ゴルフをやめてしまった。

義父は孫の事もとても可愛がってくれて「孫が大きくなったらゴルフを教えて親子でプレーするとイイよ」と言い、おじいちゃん、息子、孫と一緒にプレーできる事も夢見ていたかもしれない。

 

 

しかし、孫たちがゴルフを始める前に、義父は癌を発症してしまった。

義父は手術はせずに好きな事をして過ごす事を選択した。

人生を終えるには若すぎる義父に手術をする選択はしてもらえないかと尋ねると「自分の人生に満足している。自由に生きてきたからこれでイイ。」そう言っていた。

余命宣告を受けた残りの約1年間を義父は何事もなかったかのように、いつもと変わらず自由に好きに生きていた。

 

亡くなる1ヶ月前までハワイでゴルフを楽しみ

亡くなる1週間前に入院し、サッと逝ってしまった。

こんな最期もあるのだな、、、なんとも義父らしい最期だと思った。

今から12年前のことだった。

 

義父が亡くなってから益々ゴルフは遠のき、

子育てや仕事復帰などで忙しい日々を送っているうちにゴルフ一式も人に譲ってしまった。

 

 

 

 

 

義父が亡くなって12年、ゴルフをやめて17年ほどが過ぎた。

 

最近、ワークライフバランスを考えて生活を見直した私。

その中でもう一度ゴルフを始めてみる事にした。

 

主人のゴルフ一式をお下がりで貰い、打ちっ放しにいってみる。

周りに女性は一人も居なくて、打席には年配の男性ばかり。

なんだか見られている感じもして落ち着かない。

そもそも打てるのだろうか?

クラブの握り方とか覚えているかな?

ギクシャクとした慣れない手つきで靴を履き替え、ゴルフグローブをつける。

軽くウォーミングアップをしてから打席に入りクラブを握ってみる。

 

その瞬間、義父の声が次々と聞こえてきた。

足の位置、構え、体重移動、頭の位置、、、。

17年たった今も驚くほど身体に染み付いていた。

 

打ち始めると、次々と特訓の時に教えてっもらった事を思い出す。

そう言えばあの時もここを注意されたな、、、。

久しぶりに義父と対話したような感覚だった。

 

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ゴルフ打ちっ放し

 

ゴルフを再開して数回打ちっ放しに来ているのだけれど、その度に義父の特訓を思い出している。

そして義父が私の中で鮮明に生きていた事に驚いている。

 

義父からもらった宝物を捨てなくて良かった。

そして人の心の中で生きることの尊さを知った。

いつか私も息子たちに宝物を遺せるように生きていきたいと思った。

 

 

 

最期まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

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